冬が去って、そこかしこに春の息吹が芽生え始める頃、
何故かいつもふと口ずさんでしまう歌がある。
サイモン&ガーファンクルの「四月になれば彼女は」という歌
確かこの歌は春から秋にかけての恋愛を季節に絡めて印象的に唄った曲であったと思う。
英語はあまり得意ではなく、ましてや英詩ともなると単語の印象的なところしか分からない。だから、“口ずさんでしまう”とは言っても全詩を歌えるわけではなく、メロディのほとんどは鼻歌になってしまうのだが、歌詞の中で季節に絡めた部分だけは印象的に憶えている。
出だしの “April come she will” はもちろんだが、“May, she will stay,” とか “July, she will fly” や “August, die she must,” そして最後の “September I’ll remember.”・・・。
歌いながら書いていてよくよくながめてみると、口ずさんでしまうこの季節の部分は全て韻を踏んでいるのだ。だから憶えやすいのかな?と思う。
ともかく、理屈は理屈としても、何故この歌をいつも思い出すのかは、分からない。
思春期の頃に好きだった海外アーティストは数多く、ビートルズやカーペンターズ、クイーンやレッドツェッペリンやディープ・パープルなどなど、友人と録音し合ってカセットテープを交換してそれぞれのお気に入りの曲を語っては盛り上がったものだった。
ただ、サイモン&ガーファンクルについては、共有できる友人がおらず、私だけのお気に入り、といった感じがしていた。
「明日にかける橋」や「コンドルは飛んで行く」「スカボローフェア」などなど名曲が数々あり、今でもたまに聴きたくなって聴く楽曲もそういったヒット曲が多く、この「四月になれば彼女は」はどちらかというと佳作小品といった雰囲気で、積極的に聞きたいと思ったことはあまり無いのだが、何気なく口ずさむのは何故かいつもこの曲なのである。
April come she will
四月になれば彼女は
きっと、この曲の雰囲気や印象が、これからやってくる春のうれしさ楽しさ、少しだけむず痒いような感覚と気怠さ、そんな様々な感覚が入り交じった自分の中の“春”とどこかで無意識に繋がったのではないか、そんなふうに思っている。
それにしても、アート・ガーファンクルの歌声は、美しく澄んで流れる早春の雪解け水のようだ。